田舎のローカル線に乗り、母の故郷に帰った思い出。

列車の窓を引き上げると、稲穂の香りとともに秋の冷たいがヒューと舞い込みます。
母はバックからチョコを1つ私に渡すと、何も言わず窓の外を見ていました。
山間の小さな駅から小1時間ほど歩くと、母の実家に着きます。
祖母の命日だったのでしょうか、
仏壇で手を合わせると母はしばらく祖母の写真を見つめていました。
祖母は私が生まれる前に亡くなったので、私は会ったことがなかったけれど、
遺影の祖母は若く、その当時の母によく似ていました。
いつときからか、
「夢は今もめぐりて 忘れがたきふるさと」と歌うと、
母に手をひかれ、とことこ歩いたこの日の光景がよみがえります。
亡き祖母を想う母と、亡き母を想う私が重なり、
温かくも切ない思いが湧きあがってきます。



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